2013年3月26日火曜日

「せっかくだから」の罠


6億円で購入のおもちゃ、活用できず無償譲渡へ」という記事。


府立大型児童館「ビッグバン」が所有する江戸期から昭和期のおもちゃ約5万6100点
金額にして約6億1800万円相当)を国立民族博物館に無償譲渡するという。
おもちゃの内容は国産のものとしては最も古い万華鏡やブリキの馬車、セルロイドの人形など。
“当時の社会状況がうかがえる素晴らしいコレクション”だという。

しかし、
1)展示が収蔵品の一部にとどまる(府監査委員が「有効な活用がされているとは言い難い」と指摘)
2)保存にも人件費や保全費など年約400万円がかかる
などの理由から無償譲渡に踏み切ったようだ。

不思議なのは、1)も2)も購入の時点である程度予測がつきそうなものだけれど……という点だ。
とくに、2)の人件費と保全費用については、6億円に比べると微々たる金額。
お金をかけたところで、収入に結びつくアテが見つけられず、根を上げたということなのだろうか。

文化的、歴史的に価値があるものを保全するということ自体は、意義も価値もあると思う。
死蔵したり、朽ちさせてしまうことを思えば、
活用してもらえる先が見つかったのも喜ばしいことだろう。

1993年に約6億円を投じてから、わずか20年間で限界を迎えることを
予見できなかったことは、うやむやにしないほうがいいのではないか、とも思う。
何がどうなって6億円のおもちゃ購入に至ったのか、詳しいことはわからなかった。
府立大型児童館「ビッグバン」のサイトを見ると、さまざまな切り口から
おもちゃを紹介するページがあり、活用しようと努力していた様子もうかがえる。

館内には、子どもたちが時代玩具と触れあうことができる実物大ジオラマなど、
おもちゃの歴史をフォーカスしたフロアもあり、歴史あるおもちゃをとりあげたい
意欲は感じられるが、巨大遊具に夢中になる年齢の子どもがそこまで興味を持つとは
思えず、かといって、大人が子どもにまじってわざわざ足を運ぶだろうかという疑問もあった。

“価値あるもの”だからといって、次の価値を生めるかどうかは確約されていない。
活用できなければ、ただの場所とり、負債になってしまうこともある。

「せっかくだから」の誘惑は、心をとろかすほどに甘美だ。

「一生もののコートだから」「次はいつ買えるかわからないから」
などと理由をつけては後先考えずにレジに向い、
結果、物をあふれさせてしまっている日常を思い、
深く深く反省する次第でありました。





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