2013年1月29日火曜日

高学歴幻想を抱いているのは誰なのか


高学歴プア 東大院卒就職率56%、京大院卒はゴミ収集バイトという記事。


すごく懐かしい話題だ。
私が大学院に進学したのは、たしか1996年。
就職活動にコケて、にっちもさっちも行かなくなったときに、
ゼミの教授から大学院の願書を渡され、
大学最後の夏休みを死守すべく、受験した。


理系ならともかく、文系の大学院に進学してしまったら
就職できる可能性は格段に低くなる。
まして、私が専攻していたのは「経済学史」
(出席をとらないという理由で選んだ)という、
文学部寄りのジャンルだったので、民間企業に就職できる
可能性はほぼゼロになる。
そのことは親には伝えず、「教授に誘われたから」を強調し、
進学OKの答えを引き出した。


入学して最初に先輩から教えられたのは、
「就職が決まっても、誰にも教えてはいけない」ということだった。
大学院生の就職は「ポストに空きがあるかどうか」
かつ、教授の"政治力"で決まるので、うっかり就職が決まったことを
話してしまうと、<あの大学にはポストがある>と聞きつけた別の教授が
ゴリ押しで内定取り消し⇒自分の教え子を押し込む可能性もあるという。

「東大ならともかく、うちの大学じゃ就職は厳しい……」という、
愚痴ともアドバイスともつかない話はしょっちゅう耳にしたし、
「研究者として成功したいなら、女なら専業主婦、男なら
看護師や教師など"稼げる妻"をめとり、扶養家族にしてもらうべし」
という持論をぶつ人もいた。

就職内定をとりつけることができず、就職活動から逃げるために
大学院に進学した私が言うのもなんだけれど、
そりゃ、就職難しいよなあと思うような発言や行動をしょっちゅう目にしていた。

この記事は"文科省は修士・博士のキャリアサポートに乗り出し、企業とのマッチングを
行なっているが、状況が改善する兆しは見えない"と指摘する。
その理由として"少子化で学部への新入生が減少する中で
「大学院生を増やして食い扶持を維持したい」という大学側の思惑"をあげているが、
当の大学院生たちはそもそも、民間企業に就職したがっているんだろうか。

私が知っている文系大学院生の多くは、
身分と一定収入が保証された状態で、好きな研究に没頭したいと願っていた。

それは「"好き"を仕事にしたい」にも通じる、虫のいい発想でもあり、
誰もがかなえられるものではないというのは、ごく自然なことなのではないか。

また、「学歴が高ければ、"いい会社"に就職し、"いい給料"をもらえる」
という前提に立つと、気の毒で仕方がないような生活も、
案外、本人にとっては楽しく、好きなことをやってるだけかもしれないとも思うのだ。

私自身は博士課程の途中で、ライターになりたくて上京して以来、
バイト面接を受けていないので、「院卒」(そもそも中退だけど)の肩書きがどれくらい、
アルバイト求人に対して不利なのか、実感値としてはわからない。

でも、この記事に登場する<京都大学大学院で博士号を取得したAさん>が
非常勤講師の傍ら、生計をたてる手段として<毎朝の「ゴミ収集アルバイト」>
を選んだのには、何かしら理由があるように思える。
非常勤講師としての収入が月収6万円。それ以外の生活費を"毎朝"のバイト
のみでまかなえるとすると、かなり割が良さそうだ。
時給や勤務時間には触れられていないので、想像にすぎないけれど。






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